あるときは踊り子、あるときはライターと、自由自在に生きるヨーコ姐さんのちっちゃなことかもしれないけど、とっても大事な話。
私は家事が苦手だ。食い意地が張っているせいで、料理はそこそこの腕前なのであるが、整理整頓、掃除、洗濯が苦手なのだ。苦手意識に怠け癖もプラスされて相乗効果を生み出し、台所でこまめにうどんを打ったり、ケーキやパンを焼いたりする割には、部屋の中はグチャグチャで、私の家事の才能は激しい欠落っぷりを見せているのである。
"嫌なことはなるべく避けて通る"その私の鉄則に従って生きていくと、一緒に住んでいる彼氏は「ベランダに干した洗濯物、もう今日で3日目なんですけど......」といわざるを得ない羽目にも陥るのである。
「洗濯物ってさ、3日ぐらい干さないと乾かないと思うよー。私はそう思うんだよね」などと超然とした態度ではぐらかすと、口の端に皮肉な笑いを浮かべながら、呆れた顔で洗濯物を畳んでくれる彼氏。(優しい男で良かったよ~。普通なら殴るよな~)と思いつつ、良心が咎めてちょっとぐらいは手伝ったりもする。さもなくば最初からじゃんけん勝負で、どっちが洗濯物を取り入れるか、どっちが洗い物をするか、熱き戦いが我が家では繰り広げられるのである。
新しい家電製品が出るたびに飛びつくように購入するのも、要は家事をサボりたいからである。洗濯乾燥機が出れば即購入した。食器洗い機も速攻で買った。余計な電気代がかかると解っていても、それぐらいに家事が嫌いで嫌いで仕方がないのである。
みなさんは「ルンバ」という掃除機はご存じであろうか? そう。UFOの様な形をした、掃除機自らが部屋中を走り回るという、あの全自動掃除機である。
様々な家電を飛びつくように買う私も、この掃除機だけは何年も購入をためらい、悩みに悩んだ。だって、掃除機ごときで8万近くしやがるんだぜ、たかがソージ機でだぞ!
腰椎ヘルニアを持っている私のような人間にとってみれば、長時間中腰で掃除をするなぞもってのほか。掃除機なんつーものはヘルニア患者にとっては「天敵」の様な存在なのであるが、そんな「天敵」に8万も払えるか! あほらしい......。と、思いつつも。月に一回ぐらいは嫌々ながらも床に這いつくばって、コロコロで掃除しながら「ルンバ買おうかなー」と何度も真剣に考えた。何度も挫折しそうになった。何度も苦悩した。
心優しくマメな性格の彼氏は、私がご飯を作っている最中に、勝手に掃除や洗濯をしてくれたりするのであるが、それでも一応心は咎めている。家事やらせて悪いなーと思いつつも、「私のダスキン」というあだ名を付けたりなんかもする。でも、やはり良心は疼くが、しかし掃除は嫌い。その苦しい心の狭間にルンバと8枚の1万円札と良心が、狂おしく行き交い交差するのである。ま、私という女はそういうヤツなのだ。一緒に住むことを選択したからには諦めて頂くしかないんだけどな。
ある日「楽天市場」でネットショッピングをしていたときにルンバとは違うメーカーの、似たような自走式全自動掃除機がある事を知った。その名も「ロボクリーナーSZ-300」名前からして安っぽいが、姿形も安っぽい。そう。そいつはルンバのパチ物......いや、模倣品ってか、中国産のコピーっつーか、まあ、似たような機能を備えた似たような掃除機なのである。お値段2万9800円。おおお~っ。なんと素晴らしい!!
「ポチッ♪」速攻でボタンをクリックし、買い物を済ませたことはいうまでもない。
自宅に届いた「ロボクリーナーSZ-300」を作動させてみると、横に付いているサイドブラシはゴミを本体の方にかき寄せる役目のはずが、ゴミを部屋の四方八方に履き散らし、ちょっと大きなゴミはそれを乗り越えて突き進んでいく。犬の毛と私の髪の毛が絡まったパワーブラシは力無くその動きを止めるという、情けない性能の持ち主ではあるが、一発で私はこいつに恋をした。
だって、買い物に行く前にスタートボタンを押すと、買い物が終わって帰ってきた頃には掃除が終わっている。犬の散歩に行く前に作動させておけば、帰ったときには掃除が終わっている。しかもUVランプ付きで、部屋中を紫外線消毒しまくりながら掃除してくれるのである。掃除が終わればこいつは自分から充電ステーションに走って帰って、充電を開始しているのだぞ。なんと賢い掃除機なのだ!!
「こ、これで、嫁に行ける!! こいつがいてくれさえすれば私は嫁に行ける!!」
この日、掃除機(別名 竹千代くん)を胸に抱き、彼の命が尽きるまで運命を共にすることを、固く心に誓ったのであった。
竹千代くんはサイドブラシをカーテンに絡ませて死んでいる時もある。バスマットに乗り上げて足を取られて死んでいるときもある。充電ステーションで充電出来なくなったことも数知れずあるが、その度に半泣きで販売元のサポートセンターに電話するが、とてつもなく親切なサポートを受けて、竹千代くんは何度も生き返った。だからこそ余計に愛おしいのである。出来の悪い子程可愛いというではないか。それがこの竹千代くんなのだ。
ある日の午後、「私のダスキン」はベランダを見つめながらこういった。
「洗濯物が4日目になりました。そろそろ乾いたと思います。取り込んでいいですか?」
とうとう私の洗脳が完成の域に近づいてきたようである。
