ヒマだ。映画でも観るか。でもいったいなにを観よう。絶対失敗はできんぞ。そんなときはこのコーナーにアクセスしてください。なんにもやることがない夜のおとも。ちょっと奇妙な映画紹介コーナーです!
(ライター・堀田純司)
●「ユビキタス化するツンデレ 歴史的なツンデレ』
海音寺潮五郎『蒙古来る』1954年
<!--いかにもオタク文化発の概念らしい「ツンデレ」ですが、しかしもともと洋の東西を問わず好まれるキャラクター設定であり、いろいろな作品にツンデレは見られます。次回は、歴史大作におけるツンデレを取り上げます。-->
なぜだか、単に面白いDVDを紹介することを旨とするコラムであるはずなのに、連載開始早々からむやみに「ツンデレ」についてこだわっています。
これまで「ツンデレ」が、ラブコメ漫画やアニメだけに登場する設定では決してないことを示すためにガイ・リッチー監督、マドンナ主演の映画『スウェプトアウェイ』とリナ・ウェルトミュラー監督の『流されて2』をご紹介してきました。今回は、重厚な歴史大作のなかに見られる「ツンデレ」をご案内します。
その歴史大作とは海音寺潮五郎氏の1954年刊の小説『蒙古来る』です。時代は鎌倉中期。大帝国モンゴルが侵攻してくるという未曾有の国難を舞台に、武士たちを率いて立ち向かう若き執権、北条時宗。危機をおのれの権力闘争に利用する勢力に立ち向かう海の男、河野通有。さらには遠く故国を離れ日本に流離したペルシャの亡国の王女など、魅力的な群雄たちを描いた大河小説です。
この作品は、史実にもとづいて雄大な歴史の波を描きながら、同時に作家ならではの奔放な想像力をはばたかせた名作なのですが、その一方で、現代の目から見ると主人公の若武者、獅子島小一郎が出会うヒロイン、公家の姫君、多子(さわこ)の、実にオーソドックスなツンデレぶりにも目が引かれる作品です。
彼女は、国難の中で腹黒い密謀を巡らせる者たちの首魁、西園寺実兼の妹として登場します。まだ少女なのですが、その美貌とはうらはらに行動は男勝りで気位も高い。もちろん、わがままです。
主人公の小一郎は、はじめて彼女に出会ったとき、その高慢な態度にこう感じました。
しかし、お供を申し付けられ、馬で遠乗りに出かけた際、小一郎は多子が蛇におびえる様子を目撃してしまいます。
「こわいのですか。姫君も女性にはちがいありませんな」
と口をすべらせた小一郎に、多子は
「そなたは、わたしをばかにしている。きらいです!」
とやっつけます。
いかがでしょうか。見事なツン描写であると筆者は感じます。
このような感じで小一郎と多子は楽しい時間を過ごして行きますが、ほどなく小一郎は、西園寺実兼の密謀とペルシャの王女をめぐる国際組織の暗躍に巻き込まれ、追われる身となります。多子は窮地の彼を救いに屋敷を出るのですが、しかしそこまで積極的な行動に踏み込みながらもなかなか自分の気持ちには素直にはなれません。
「意地悪! 人がせっかく知らせに来てあげたのに、まだおこっているの。どうとでもおなり。多子は知らないから」
ツンデレもなかなか大変なところですが、幸い無事にこの後、小一郎と再会し、「多子を追ってきてっくれたのね。うれしいこと!」とデレ期を迎えることになります。
(次回11月23日)
