ヒマだ。映画でも観るか。でもいったいなにを観よう。絶対失敗はできんぞ。そんなときはこのコーナーにアクセスしてください。なんにもやることがない夜のおとも。ちょっと奇妙な映画紹介コーナーです!
(ライター・堀田純司)
筆者も「DVD宅配レンタル」を利用していますが、それでもやはりピンポイントで家でDVDを観たいときはあり、やはり店舗も利用します。読者の皆様は、店舗の現場で「なにを借りようか」と悩まれることはないでしょうか。筆者は時にあります。というかよくあります。借りるのはいいとしても返すのが大変。だから棚でDVDのパッケージを手にとって「果たしてこの作品は、返しに行く手間に見合うものなのだろうか」と思い悩んで立ち尽くしていますことも、毎度のことです。
そんな男に案内されても困るでしょうが、本コーナーは、筆者の印象に残った作品をご紹介。あなたの「今日はやることないからDVDでも観ようかな。でもチョイスに失敗したらムダになるな。これは難しいな」ライフの、ごくわずかにでも、牛9匹分の毛の1本ほどにもでも、お役に立てれば本望とするコラムです。
第1回「ユビキタス化するツンデレ」
その1 ガイ・リッチー監督『スウェプト・アウェイ』2002年
その第1回として、いきなり飛ばしますが『ロック ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』('98)でその名を知らしたガイ・リッチー監督が、長らく沈黙するきっかけとなった作品(超筆者主観)、2002年公開の映画『スウェプト・アウェイ』をご紹介します。
この作品はイタリアの女性監督、リナ・ウェルトミューラーの映画『流されて・・・』のリメイク作品。まったくもって鼻もちならないブルジョワ夫人、アンバーをマドンナが演じ、当時はラブラブであったであろう、その夫のガイ・リッチーが監督しました。
アンバーは、夫やその友人たちとともに地中海をめぐるプライベートの船旅に出ますが、信じられないほど驕慢で嫌な女でした。どうも体内のホルモンバランスが崩れていたのではないかと思うのですが、わがままのし放題。特に船員の一人、ジュゼッペに目をつけてからは、彼を時にいびり倒し、時に挑発的な態度をとる。誇り高いジュゼッペはとしては憤懣やるかたない思いだったのですが、船長にいさめられ必死で耐えていました。
しかし「自分は客、あなたは船員」そうした"上から目線の関係"は、二人が事故にあい、小船で無人島に漂着。漂流生活を余儀なくされることで逆転してしまいます。漂着しても当初は、自分が主人という態度をとっていたアンバーですが、ジュゼッペにはもはや耐える理由がない。というか、無人島の状況下で生き残るためには、無力なアンバーはジュゼッペに従うしかありませんでした。
逆転した関係に当初は屈辱を感じたアンバーでしたが、しかしやがて強くたくましい船員のジュゼッペに従うことに、官能のよろこびと真実の愛を見出していくことになります。映画の見所は、このアンバーの、前半の驕慢描写と後半の服従行動の落差といっても過言ではないでしょう。
妙に扇情的に書いてしまいましたが、決して下品な映画ではなく、無人島生活の描写が美しい作品でもあります。だが、緻密な構成とテンポの速い映像でその才気を知らしめたガイ・リッチーが、この作品で挑んだ新境地は批評家には酷評され、ファンにはスルーされてしまう悲しい結果に終わってしまいました。
確かにこの映画は、キャスティングの重要さという点で、大きな教訓を残してくれました。
先にご紹介したように、主人公のブルジョワマダムを歌手のマドンナが演じているのですが、その結果、この映画では、作品上におけるキャラ設定の読み取りが、非常に難解になってしまっていたのです。
つまりそのブルジョワが、「驕慢だが、たまらないほど魅力的な肢体と顔を持ついい女」なんだか、「美容整形とかやりすぎてちょっと人工的な感じになっちゃっているけども、まあ美人」なんだか、はたまた「頑張っているけどイマイチなおばさん」なのか、判然としませんでした。事実、実は主演がマドンナだとは知らなかった筆者などは、エンドクレジットを見るまで「なぜこの人がこんなに偉そうなのだろうと」ずっと怪訝に感じていたものです。
(次回26日に続く)
